未決勾留日数
「未決勾留日数(みけつこうりゅうにっすう)」とは、勾留されてから判決が確定するまでに実際に勾留された日数をいいます。
先日、被告人と接見した際に質問されたので、今回は、その「未決勾留日数」についての解説です。
「一審で未決勾留日数が算入されなかったけど、これまでそんなことなかった、おかしいんじゃない?」
という質問でした。
刑事事件で逮捕されて、勾留されたまま起訴されると、保釈されなければ、有罪か無罪かもわからない状態であるにもかかわらず、ずっと身柄拘束されていることになります。
この状態のことを、未決勾留といいます。
(有罪と確定していない間の勾留ということです。)
未決勾留日数は、実際に勾留されている日数(身柄拘束された日数)なので、保釈された期間は除きます。
「未決勾留日数の算入」とは、有罪の判決が言い渡される場合、未決勾留の日数の全部または一部が本刑から差し引かれることです。
(刑法21条で「未決勾留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる。」と定められています。)
例えば、判決で懲役刑を言い渡される場合、
「被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中30日をその刑に算入する。」
との判決が言い渡されたとします。
この判決は、
懲役3年(刑務所に3年間入らないといけない刑)だけど、
判決が確定する前に勾留されていた期間のうち、30日は既に執行されたものとします
という意味です。
(結局、残りの懲役の期間は2年11月となります。)
法律上、刑に算入することができる未決勾留の日数は、勾留状が執行された日(勾留が始まった日)から判決の前日までです。その未決勾留の日数のうち、何日を刑に算入するかは、法律では決められておらず、裁判官の裁量に任せられています。
では、判決の時に、裁判官が算入する未決勾留日数を適当に決めているかというとそうではありません。
通常は、以下のような計算方法で決めています。
未決勾留日数の計算方法は、
(起訴日から判決日の前日までの日数)-(30日+(公判日数-1)×10日)
で出てきた日数を10日刻みにする
です。
以下、例を交えて解説します。
まず、起訴日から判決日の前日までの日数を数えます。
(例えば、55日だったとします。)
そこから30日と公判期日の回数から1を引いた数に10日を掛けた日数を引きます。
(例えば、公判期日が3回だったとします。)
これは、手続を行うのに不可欠な日数は除いて、それを超える日数を刑に算入するという考え方によります。
(起訴して第1回公判期日までに30日はかかるだろう、それ以降は期日毎に10日はかかるだろうという考え方ということです。)
そうすると上の例の場合の計算は
55日-(30日+((3-1)回×10日))=55日-50日=5日となります。
判決で言い渡す場合には、通常は、10日刻みで未決勾留日数を算入します。
(これも法律で決められているわけではなく、裁判所の慣習です。)
10日未満の日数がある場合にどうするかというと
切り上げ、切り捨て、四捨五入
のどれかで10日刻みにします。
(どれにするかも法律で決められているわけではなく、裁判官に任せられています。)
何となく、四捨五入が公平な気もしますが、実際には、切り上げで算入する裁判官もいれば、切り捨てで算入する裁判官もいます。
上の例の場合は、計算の結果は5日ですから、
切り上げ、または四捨五入であれば10日
切り捨てであれば0日
を算入することになります。
上記のような計算の結果、算入すべき日数が0日になれば、未決勾留日数が算入されないということになります。
最初の被告人の質問に対する回答は、
「未決勾留日数によっては、計算の結果として未決勾留日数が算入されないことはあり、それはおかしくはない。」
となります。