期限の利益
お金を借りて○月△日までに返しますという約束をした場合,決められた期限(○月△日)まではお金を返す必要はなく,支払いを請求されることもありません。
このように,期限が到来していないことで債務者が受ける利益のことを「期限の利益(きげんのりえき)」といいます。
分割払いの約束をしたときも,それぞれの支払日までに分割金を支払えばよいのですが(これも期限の利益です),分割金を全く支払わなくても,残りの分割金は,分割払いのままでよいとなると,支払ってもらう方としては,少し困ってしまいます。
(分割金を支払わないという不誠実な債務者に対して,いつまでも全額の支払いを求めることができないことになってしまいます。)
例えば、1月から12月まで毎月10万円ずつ12回の分割払いの契約をしたとします。
1月から3月まで全く支払がなくても、請求できるのは30万円だけで、そのまま支払がなくても、4月に請求できるのも40万円となります。
全く支払わないとしても、全額の請求をするには12月まで待つ必要があります。
そこで,約束どおりの分割払いを怠った場合には,分割払いではなく,残りの金額を一括で支払わなければならないと契約で定めておけば,
- 約束を守っている債務者は分割払いという期限の利益を得ることができ
- 約束を守らない債務者は一括払いをしなければいけなくなる
ということが実現できます。
このように,約束の支払いを怠った場合などに,一括払いしなければいけなくなったりすることを「期限の利益を喪失する」といいます。
注意しておきたいのは,期限の利益は,約束どおりの支払いをしなければ当然に喪失するものではないので,そういう場合には期限の利益を喪失すると契約などで定めておかなければ,債務者がいくら支払いをしなくとも,期限の利益を喪失させることはできません。
(分割払いの契約で,一部の未払があったら期限の利益を喪失すると定めていなければ,期限が到来した部分しか請求できません。)
分割払いを受ける側であるときは,期限の利益の喪失についても契約で定めているか,ちゃんと確認しましょう。