時効の援用
「時効の援用」とは、時効により利益を受ける者が時効の効果を主張することです。
「時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」と法律で定められています(民法145条)。
時効が成立する要件が揃っていても、当事者が援用しない限り、その効果は確定的に発生せず、裁判所は、時効の効果が発生するとして裁判をすることはできません。
例えば、他人にお金を貸した人は、貸したお金を返してもらうという債権を持っていますが、一定期間その権利を行使しなければ消滅時効にかかります。
(上記の一定期間は、以前は10年間でしたが、民法の改正により、
「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間」
または
「権利を行使することができる時から10年間」
へと変更になりました。)
消滅時効にかかった債権は、借主が「もう時効が成立したから返しません」と貸主に対して時効の援用をすると、消滅時効の効果が確定的に発生して、貸主は借主へ請求できなくなります。
しかし、時効の利益を受ける当事者(上記の場合は借主)が時効の援用をしないときは、
裁判になった場合、裁判所が勝手に「この債権はもう時効です」といって処理することはできません。
当事者は、時効になっているかどうかをきちんと見定める必要があるということですね。