時効
「この話はもう時効だから・・・」という会話をたまに耳にします。
法律用語の「時効(じこう)」は,このような日常会話で出てくるものとは似て非なるものです。
法律上の時効には,民事事件の時効として取得時効,消滅時効,刑事事件の時効として公訴時効,刑の時効があります。
- 「取得時効(しゅとくじこう)」とは,他人のもの(土地や建物など)を自分のもの(これも日常会話とは意味合いが異なるのですが)として一定期間使っていたら,そのものの権利が自分のものになるという制度です。
- 「消滅時効(しょうめつじこう)」とは,お金などを請求できる権利があるのに,何も行動を起こさず一定期間が経った場合には,その権利を主張できなくなる(お金などを請求できなくなる)制度です。
- 「公訴時効(こうそじこう)」とは,犯罪を犯したひとが一定期間起訴されなかった場合には,起訴することができなくなる(したがって,犯罪を犯していたとしても,処罰されなくなる)という制度です。
- 「刑の時効」とは,刑の言い渡しを受けて確定したあと,一定期間刑の執行を受けなかった場合に,刑の執行ができなくなる制度です。
こうして見ると,どれも常識外れの制度のようですが,それなりに理由があるということで大昔から存続している制度です。
(時効制度は,ローマ法のころから存在しています。)
公訴時効については,2010年に大きな改正がありました。
例えば,殺人罪などについては,公訴時効がなくなりました。
民事の時効についても,2020年に施行された改正された民法では,これまでと比較して,時効の期間が見直されたり,時効の停止,中断が完成猶予,更新という新しい用語(内容も変わります)となったりと様々な変更があります。