当番弁護士
警察に逮捕,勾留された場合,被疑者やその親族の依頼により,弁護士が,身柄を拘束されている被疑者のところへ一度無料で接見に行く制度があります。
その制度を「当番弁護士制度」といい,その弁護士のことを「当番弁護士(とうばんべんごし)」といいます。
当番弁護士は,被疑者の話を聞いて,刑事手続の流れや被疑者の権利について説明し,今後の対応方法などについてアドバイスします。
被疑者の希望があれば,そのまま依頼を受けて,弁護人となることもできます。
よく誤解されるのですが,当番弁護士は,国の制度ではなく,弁護士会が全ての費用を負担して行っている制度であり,国選弁護とは全く別の制度です。
実際に接見に行く弁護士には,弁護士会から日当が支払われますが,その日当も弁護士会費でまかなわれているので,弁護士にとっては,接見にも行く必要があり,当番弁護士制度を維持するための会費も負担しなければならないという,それなりに負担の大きな制度です。
なぜ,そのような制度を弁護士会が行っているのかといえば,被疑者の権利を守るために必要だからです。
制度が始まった1990年当時は,被疑者段階での国選弁護の制度はなく,被疑者は,刑事手続の流れも自分の権利も分からないまま,自白の強要などを受けることもありました。
そこで,弁護士のアドバイスを受ける機会を保障するために始められたのが当番弁護士の制度です。
その後,2006年には被疑者国選という制度ができ,当初は制限があった対象事件も拡大して,2018年からはその制限もなくなり,現在では被疑者が勾留されている全ての事件について国選弁護人を選任してもらえるようになりました。
そういうわけで,当番弁護士制度を開始したときの目的のかなりの部分は被疑者国選でカバーされるようになったといえなくもないです。
とはいえ,国選弁護人を選任してもらうには,「貧困その他の事由により弁護人を選任することができない」という理由が必要です。
また,勾留される前の段階(逮捕の段階)では,国選弁護人はつかないので,逮捕されてすぐに無料で接見をしてもらうには,当番弁護士を呼ぶ必要があります。
したがって,現時点でも当番弁護士制度が不要になったわけではありません。