係争物に関する仮処分
「係争物に関する仮処分(けいそうぶつにかんするかりしょぶん)」とは、当事者間で争いとなっている物(係争物)について、その現状の変更により、債権者(係争物について何らかの権利を持っている者)がその権利を実行できなくなるおそれがあるとき、その権利を保全するために行う民事保全の手続のことです。
民事保全の項で説明したとおり、民事保全の手続には、金銭債権を保全する「仮差押」のほかに、「係争物に関する仮処分」と「仮の地位を定める仮処分」があります。
そのうち、係争物に関する権利を保全するのが「係争物に関する仮処分」です。
「係争物に関する仮処分」は、特定の物への権利を保全するために行います。
「係争物に関する仮処分」には、さらに大きく分けて「処分禁止の仮処分」と「占有移転禁止の仮処分」があります。
例えば、
不動産を買ってお金も支払ったのに、売主が登記手続に協力しない、
このままでは売主が第三者にその不動産を二重売却して第三者が先に登記をしてしまうかもしれないという場合、
⇒第三者に先に登記をされてしまわないように、「処分禁止の仮処分」を申立てたうえで、「所有権移転登記請求」の本案訴訟を提訴をします。
「処分禁止の仮処分」の命令が出ると、この仮処分が登記されるので、仮処分の登記の後に第三者が登記をしても、本案で勝訴すれば、仮処分登記後の第三者の登記は抹消されます。
すなわち、「処分禁止の仮処分」によって、本来の目的である「所有権移転登記請求権」を保全することができます。