占有権
「占有権(せんゆうけん)」とは、物を実際に支配していることによる権利です。
「所有権」と違って、少し分かりにくい権利といえます。
本当の持ち主ではないけれど、「物」を支配しているということがあります。
例えば、アパートの賃借人は、そのアパートの所有者ではないけれど、実際に住んでアパートを支配していて、仮に解除などにより賃貸借契約の効力がなくなっても、アパートを退去する前は、実際に住んで支配している状態は継続しています。
また、量販店等で売られていた物を盗品とは知らずに購入して使用している人や、「ちょっと預ってて」と頼まれて友人の物を所持している人も、その「物」を実際に支配しています。
このように、物を実際に支配している状態を「占有(せんゆう)」といい、物を占有している状態を保護する権利(占有していることにより有する権利)のことを「占有権」といいます。
占有権は、所有権ほど強力ではありませんが、物を取られたり壊されたりなどの占有を妨害された場合(されそうな場合)には、占有訴権(せんゆうそけん)という権利を行使することができるなど、「占有」という実際の支配状態を保護するための権利があります。
占有訴権には以下の3つがあります(民法197条)。
- 占有保持の訴え(占有妨害されているとき)
- 占有保全の訴え(占有妨害されそうなとき)
- 占有回収の訴え(占有を奪われたとき)
⇒占有の妨害の停止及び損害の賠償を請求することができます(民法198条)。
⇒占有の妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができます(民法199条)。
⇒占有を奪われた物の返還及び損害の賠償を請求することができます(民法200条1項)。
占有者は、所有者でなくても、上記の占有訴権などにより、占有している状態を保護できるということになります。